下仁田自然史館の前庭で、今年も鉄づくりの催しがありました。「たたら」とよばれる古くからの技術での鉄づくりです。
下仁田は
●磁鉄鉱が採れて
●明治の初期に近代的な製鉄が行われた場所 ・・・つまり 鉄には「縁」があります
でも、なぜ今になって昔の技術の、効率の悪そうなたたらを?と思う人もいるかもしれません。でも、大きな施設もないのに、庭の一角のようなところでレンガを積み重ねただけのように見える所で、鉄ができる・・・これって、魅力。
何といっても
自分でいじれる・参加できる・鉄づくりのすべてが見える・人との出会いがある
というわけで、たたらをやってみようという人も増えてきているとうかがいました。
そうは言うものの、準備から始まるこの仕事は、大変な労力と経験・知識が必要で、
簡単にできるとは思えません。
ここにもたたらを何度も行っている人たちが、出向いてくださっています。
理屈はさておいて・・・
写真のような炉で鉄づくり。
何だかごく当たり前に見えますが、この炉の高さを決めるにも、何度も繰り返した経験の積み重ねがあるとのこと。
一番下に穴の開いたブロックがありますが、これにも意味が。
風を送り込むふいごは、長いホースの先についているブロアー。ホームセンターに売っているもの。送風の強さだって、何でもいいというわけではない。
今回も来てくださった永田和宏さん(東京工業大学名誉教授)は、鍛冶屋さんが小さな炉で簡単に鉄をつくったのを見て、学生とやってみて…しかし4年間も鉄は作れなかったのだそうです。今では、熱心にたたらの科学を伝えてくださっています。
炉の解体中 |
鋼のもとになるものができる ケラと呼ばれる |
火の色を見たり、音を聞いたり、とにかく五感をフル活用します。
溶鉱炉より低い温度のたたらです。独特の技術があるわけでしょう。
「よし」と判断したら、取り出しです。
取り出すときは炉を解体です。
たたらの科学を語ってくださる |
この会を企画しているのは
中小坂鉄山研究会の皆さん。
中小坂鉄山の鉱石で鉄をつくって、鉄山の守り神の石宮にあった鉄の柱を再現したいという夢を持っています。
たたらは砂鉄と木炭を使用しますが、鉄山の鉱石は磁鉄鉱の塊。硬~い石です。
これを砕いて粉にして、たたらの炉で鉄にして…昨年からはじめて、昨年、今年とも、見事に成功しています。
磁鉄鉱から「たたら」により鉄を取り出しているのは、ここ下仁田だけだそうです。何しろ、まずは砕いて粉にしなけらばならない。大変そう。
できたら、守り神様も喜んでくれるだろうな。
永田氏のお話では、たたらで作った鉄はさびにくく、刀の模様のように模様が浮き出たりと、一味違う特色があるそうです。この鉄で包丁をつくったら、さびなくて使い勝手がいいということになります。永田氏はこれを、原子の世界から解き明かしていこうとされています。自らあちこちに足を運ばれ、原子の世界を見つめ、鉄の世界も「奥が深い」!
頑張って鉄と取り組んでいる中小坂鉄山研究会の人たちも,立派!
たたらについて少し詳しくは、私のブログ 野道 山道 で紹介しました。
野道 山道: 磁鉄鉱から鉄をつくる 目の前でのたたら製鉄
中小坂鉄山については以下です
野道 山道: 中小坂鉄山・近代的製鉄所があった場所